評価:☆☆☆
服装というより、服装を通じた男のダンディズムの教科書。すぐ実現できなくても、目指すべき姿をイメージするために読んでみることをオススメします。
いろんなスタイリストさんが、スーツスタイルについて書いたりしゃべったりするときのネタ元にしているであろう本です。
1999年初版で、2004年に改訂、いまでも売れている本ですから、ファッション本では相当なロングセラーですよね。
文体が独特で、なんというんでしょう、師匠の上の「大師匠」格の先生から、含蓄のある警句をいただいている感じで読めます(実際、往年のダンディ達の名言がそこかしこに引用されます)。
「〜が正しい」「〜をしてはいけない」「〜は××でなければならない」と、確固とした価値観と美意識のもと、男の服装スタイルのあるべき姿を教えてくれます。
ちょっと長いですが、目次の項目を引用します。
- スーツ
- クラシックなスーツスタイルの系譜
- クラシックなスーツのフィーリング
- クラシックなスーツのラペル(衿)について
- ボタンは実用とアクセサリーという二つの側面を持つ
- クラシックなズボンはウェストで穿く
- 試着のポイント
- スーツの手入れ
- 靴
- 製法によって異なる履き心地
- 靴はできるだけ高価なものを選ぶ
- クラシックなスタイルにフィットする靴
- クラシックなスーツに合わせる紐付きの靴の種類
- 靴紐についての考察
- 靴の手入れ
- シャツ
- クラシックなドレスシャツとは
- クラシックな上質のシャツの見分け方
- クラシックなシャツのディテール
- クラシックなシャツの作り
- ネクタイ
- クラシックなネクタイ
- 上手なネクタイの選び方
- ネクタイの手入れ
- クラシックな結び目
- 靴下
- 靴下とは何か
- 靴下の役割
- クラシックなスタイルに合わせるホーズ
- 着こなし
- クラシックな選択
- スーツを着るという行為
- 正しいスーツスタイル
- 総括
クラシック、クラシック、クラシック・・・。冒頭に書いたように、単なるハウツー本を超えて、クラシック(正統)とは何か、クラシックな服装とは何か、という価値観を伝えるエピソードが満載です。
個人的に一番印象に残っているのは、靴磨きの話のなかでの次のくだり。
そこまでの作業を終えたら、クリームが靴全体に染みわたる状況を頭に思い浮かべながら、コーヒー、または缶ビールをゆっくり飲む。・・・何もしないこの30分という時間がいちばん大切なのである。・・・飲み終えたら、ゆっくりと缶を潰し、不燃物用のゴミ袋に入れ、ゴミ袋の口を結ぶ。早く磨きたいがために、たいていの場合まだ30分を経過していないことが多いからだ。
おお、なんという豊かな世界。効率追求とは隔絶したこういう時間の過ごし方ができるのがダンディなんでしょうね。ある意味やせ我慢であり、粋でもある生活習慣が自然と外見に出て、その人の雰囲気を作るんだろうな・・・と思います。
このダンディズムの世界にハマると、もしかしたら一般社会的にはめんどくさい人になるのかも知れませんので(^_^; 適度に憧れ、適度に背伸びするきっかけにするのがよろしいのではないでしょうか。オススメ本です。